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浮世絵:葛飾北斎の富士 高校生の手でよみがえる / 墨田区・福生市

高校生の手で鮮やかによみがえった江戸の浮世絵師、葛飾北斎の富士2点。東京都墨田区で、商店街のシャッターに本所高美術部員が「海上の不二」を描いた。福生市の福生高では、生徒たちが文化祭に向け「凱風快晴(がいふうかいせい)」の巨大な貼り絵。いずれも劣らぬ力作だ。

 

◇墨田の商店街シャッターに 海上の不二 本所高美術部員

雨が激しく降りしきる8日午後6時ごろ、全ての色付け作業が終わった。達成感から、都立本所高美術部の部員たちは、満面の笑みを浮かべた。

東京スカイツリーから徒歩数分。墨田区の押上二丁目町会の会館シャッター(縦2・5メートル、横3・3メートル)に、北斎の「富嶽百景」に収められた作品の一つ「海上の不二」を描いた。

会館のシャッターは観光バスが行き交う交通量の多い区道に面しているが、普段は下ろされたまま。「灰色(のシャッター)では味気ない」。そう感じていた町会長の田中稔さん(84)が、本所高の山下康弘校長に「生徒に絵を描いてほしい」と打診した。田中さんが、大好きな北斎の作品のうち「海上の不二」を原画に選んだのは「有名な富嶽三十六景より、あまり知られていない百景から選んだ方が面白いのでは」と感じたからだ。

オリジナルの「不二」は白黒だが、高校生の手による平成版はカラフルな色彩付きだ。海の向こうにそびえる青々とした富士山、朝焼けか夕焼けのようなオレンジ色の空。原画にどんな色を乗せるかは、各部員の案を基に、町会で話し合って決めた。

部員らは7月下旬から10回ほど集まり、毎回、朝から暗くなるまで制作を続けた。「暑さで手のひらに汗がたまり、作業しにくかった」と、美術部員の1年生、中道絵理子さん(15)。そんな部員を支えたのは、地域住民の激励だ。3年生の大嶋龍斗さん(17)は「地元のさまざまな人が応援してくれた。特に、近所の年配の方がこまめに声をかけてくれたのが励みになった」。

普段は各部員が個々に作品に挑むため、共同制作は今回が初めて。「部員同士が互いの短所を補い、長所を生かして作品を作り上げたことに達成感がある」。部長の2年生、東端昂大さん(16)は誇らしげだ。美術部顧問の森田真理子教諭(36)は「学校では年々、美術の授業が減っている。シャッターの絵を多くの人に楽しんでもらい、生徒たちが芸術の大切さを感じてくれるとうれしい」と話していた。

 

◇文化祭に巨大な貼り絵 凱風快晴 福生高生徒たち

都立福生高(福生市)の中庭に12日、生徒たちが3カ月半かけて制作した巨大な貼り絵2枚が展示された=写真。葛飾北斎「富嶽三十六景・凱風快晴」(縦6.3メートル、横9メートル)と、モネ「アルジャントゥイユのひなげし」(縦7.2メートル、横9メートル)で、それぞれ本物の約25倍、約15倍のサイズ。

数百種類ある美術用ラシャ紙から「本物に見える色」を選んでちぎって貼り、浮世絵や油彩の雰囲気を再現した。制作に時間がかかったのはパソコンを一切使わなかったため。デッサンの狂いを何度もチェックして修正し、完成にこぎつけた。指導した松岡健太郎教諭は「目で見て試行錯誤する大切さを伝えたかった」と言う。

貼り絵制作は昨年に続いて2回目。今年は明るい色彩に共通点がある両作品を選んだ。モネが浮世絵の影響を受けた事実を踏まえ、「芸術の分野で世界が日本にあこがれ、芸術が世界をつないできたことを戦後70年の今、訴えたかった」と3年生の伊藤朋子さん(18)は話している。

 

http://mainichi.jp/feature/news/20150913k0000e040138000c.html
参照元記事 / 毎日新聞

白黒だった北斎の「海上の不二」が、色鮮やかに生まれ変わった=墨田区で2015年9月9日、土屋政人撮影 / 毎日新聞

白黒だった北斎の「海上の不二」が、色鮮やかに生まれ変わった=墨田区で2015年9月9日、土屋政人撮影 / 毎日新聞

都立福生高の中庭に12日、生徒たちが3カ月半かけて制作した巨大な貼り絵2枚が展示された / 毎日新聞

都立福生高の中庭に12日、生徒たちが3カ月半かけて制作した巨大な貼り絵2枚が展示された / 毎日新聞

 

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