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和紙 : 高まる関心 ローマで手すき実演 文化財修復も

【ローマ福島良典】共に伝統的な製紙技術を持つ日本とイタリアの間で「紙」の文化交流が盛んになっている。墨のにじみを引き出す繊細な和紙と、インクをしっかりと受け止める肉厚の西洋紙。筆とペンという東西の筆記具の違いが、それぞれの紙の特性に表れているという。和紙は27日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、イタリア人の関心も高まっている。

「東西の(伝統的な)紙の違いは原料です。欧州は木綿紙ですが、和紙の原料の7割はコウゾ。繊維が長く、強い紙を作ることができます」「書家は和紙を貯蔵し、ワインのように熟成させます」。今月13日、ローマ在住29年の現代美術造形作家の秋山信茂さん(53)がローマ日本文化会館で和紙の「流しずき」を実演した。

秋山さんは日本の和紙産地を訪れて「流しずき」の技術を習得し、イタリアで和紙の普及に努めている。ローマのジュゼッペ・トゥッチ国立東洋美術館では来年1月11日まで、和紙を使った彫刻作品の個展が開催中だ。「西洋紙とは原料も製法も違う和紙とは何かを伝えていきたい」

13日に7回開かれた実演会にはイタリアの市民や児童・生徒ら計約250人が参加、メモを取りながら、和紙の歴史や製法に耳を傾けた。ローマの元教師、マリオ・ガッリさん(77)は「工業製品として大量生産される紙に比べ、和紙は工芸的で、手作り感がある」と感想を語った。

和紙とイタリアのかかわりは深い。1966年にイタリア北部フィレンツェが洪水に見舞われた際、古文書などの修復材として、保存に優れた和紙に白羽の矢が立った。以来、文化財修復に適した紙として和紙がイタリアで評価され、現在でも広く用いられている。

一方、イタリアの紙も約800年の歴史を持つ。中部ファブリアーノで世界で初めて「すかし」入りの紙が作られたとされ、南部アマルフィも手すきの紙で知られる。アマルフィは昨年5月、和紙の産地である岐阜県美濃市と「紙の文化交流」友好協定を締結。両市の親善団が相互訪問するなど東西の交流を深めている。

http://mainichi.jp/select/news/20141129k0000e030172000c.html
参照元記事 / 毎日新聞

ローマ日本文化会館で秋山信茂さんが披露する和紙の「流しずき」実演を見学するイタリアの児童ら=2014年11月13日、福島良典撮影 / 毎日新聞

ローマ日本文化会館で秋山信茂さんが披露する和紙の「流しずき」実演を見学するイタリアの児童ら=2014年11月13日、福島良典撮影 / 毎日新聞

和紙を使った秋山信茂さんの造形作品=提供写真 / 毎日新聞

和紙を使った秋山信茂さんの造形作品=提供写真 / 毎日新聞

 

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