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和食を超える“東京料理” 京都文化博物館の「京都 なだ万賓館」

1830(天保元)年創業の日本料理の老舗、なだ万(本社・東京都新宿区)が9月、京都初出店となる「京都 なだ万賓館」を京都文化博物館内にオープンさせた。首都圏を中心に日本料理の老舗で知られるなだ万だが、日本料理の“総本山”ともいえる京都への出店にあたり「東京料理」という新概念を打ち出した。海外の食材などを取り入れ「伝統的な和食にこだわらない新たな日本料理を提供したい」と意気込んでいる。

 
念願の地に出店

長崎出身の初代・灘屋萬助氏が大阪で創業後、東京に本社を移して知名度を高めたなだ万。いまでは国内はもとより、香港やシンガポール、中国などアジア5カ国にも7店舗を展開するが、松苗充紀支配人(40)は「京都への出店は社をあげての念願でした」と強調する。

「首都圏を中心に、北海道から九州まで幅広く店舗を展開してきましたが、何と言っても京都は日本料理や和食文化発祥の地ですからね。念願かなって気が引き締まる思いです」(松苗支配人)

その言葉に偽りはないだろう。「京都への初出店にあたり、好条件がそろっている場所だった」(松苗支配人)という理由で、出店場所は京都の中心部のさらに中心といえる中京区の三条高倉にある京都文化博物館内。意気込みのほどが伝わってくる。

無論、店内も和の要素が基調のシックな作りで、1階は洋個室を含め26席、地下1階は和個室14席と、なだ万の店舗として最小規模だが、地下の方は庭もしつらえており、京都の風情を生かしたつくりに。

そして料理の方にも工夫を凝らした。「多くの老舗料亭がある京都で、同じ土俵で勝負を挑まず、これまで東京で培ってきた経験を基に、海外の食文化や経験を取り入れた純和風ではない『東京料理』というカテゴリーを創出したのです」(松苗支配人)と説明する。

 
先付けにカツサンド

というわけで、早速、その料理(11月の夕食メニュー)をご紹介いただいた。

まずは前菜。紅葉したモミジを添えた豪華で美しい器の数々に盛られた「富有柿、海老、湿地(しめじ)の胡麻クリーム和え」や「秋鯖(さば)の小袖ずし」などは味覚的にも視覚的にもインパクトの強い逸品だが、とりわけユニークなのが和牛のテンダーロインカツサンド。

シンガポール店に約3年在籍し、腕を振るった伊藤卓也料理長(39)は「伝統的な京料理は基本、肉は使いませんが、和食文化にこだわらない先付けとして、日本人に親しまれているカツサンドを採用しました」と胸を張る。

「ぐじ(甘鯛)餅粉揚げ かぶら汁仕立」は、昆布だしで割った甘鯛のスープと、京都産のカブラの甘みと食感が絶妙だし、紅葉したモミジを配した美しいガラスの器に盛った淡路産の鯛や車海老、北海道産の本マグロなどの刺し身は、五感で秋の深まりを感じてもらいたいとの気配りが感じられる。

 
こだわり牛タン

そして「和牛牛タン柔らか煮」という再びユニークなメニューが。「ステーキなどだと驚きがないし、野菜や魚などの煮物も珍しくないので、牛タンを角切りにし、最もおいしい状態で煮ることにしたんです」と伊藤料理長。使っているのは最高級の飛騨牛の牛タン。なだ万が定義付ける「東京料理」の真骨頂といえるだろう。
「ずわい蟹(かに)とトマトのサラダ」も、タバスコなどで酸味と辛味を強調したトマトと、マヨネーズで和えたカニが見事な融合ぶりを見せる。

伊藤料理長は「今後は世界各国の食材を積極的に使い、他店とは違った料理の提供に挑みたい」と訴える。なだ万の「東京料理」が京都人の舌を唸(うな)らせる日はそう遠くなさそうだ。

 
■京都 なだ万賓館

京都市中京区三条高倉、京都文化博物館1階・地下1階、(電)075・251・7701。営業時間は昼食が午前11時30分~午後2時(ラストオーダー)、夕食は午後5~8時(ラストオーダー)。昼食は5400円、夕食は1万800円のコースと、1万4040円のおまかせ(予約制・和個室限定)のコースの2種類(いずれの価格も税込み)。月曜日定休で月曜日が祝日の場合、翌火曜日が定休。
http://www.sankei.com/west/news/141224/wst1412240024-n1.html
参照元記事 / 産経WEST

まるで芸術作品のような前菜。和牛テンダーロインカツサンドを加えるなど、旧来の和食にこだわらない姿勢が感じられる=2014年11月14日、京都市中京区(志儀駒貴撮影) / 産経WEST

まるで芸術作品のような前菜。和牛テンダーロインカツサンドを加えるなど、旧来の和食にこだわらない姿勢が感じられる=2014年11月14日、京都市中京区(志儀駒貴撮影) / 産経WEST

 

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