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種痘、帝王切開の先駆者輩出 ときがわの医家・小室家 / 埼玉

江戸後期から明治初期にかけて優れた蘭方(らんぽう)医が輩出した番匠(ばんじょう)村(現ときがわ町)の医家・小室家の史料を紹介する企画展「小室家文書展 在村医のまなざし」が、さいたま市浦和区の県立文書(もんじょ)館で開かれている。十月十一日まで。同館の井上かおり学芸員は「医師に高い倫理観を求め、あらゆる医学を使って命を助けた小室家の志を知ってほしい」と話している。

福井藩出身の医師だった小室家は一七二五(享保十)年、医師のいなかった番匠村に招かれた。三代目の小室元長は産科術や西洋医学を学んで医学塾「如達(にょたつ)堂」を設立。幕末に種痘(天然痘の予防接種)や帝王切開手術の先駆者となった医師たちもここで学んだ。

会場には、小室家が今年三月に同館に寄贈した医学関係の書籍や医療器具、美術品など約七千六百点のうち約九十点が並ぶ。

「如達堂産科奥術秘伝巻(おうじゅつひでんのまき)」(一七九六年)は、元長が産科術の極意を書いた書物。難産の際、母親の命を救うための方法などが図解されている。

江戸後期を代表する銅版画家安田雷洲(らいしゅう)の肉筆画「紙本淡彩(しほんたんさい)足羽先生提安藤文澤(ぶんたく)雪行図」(一八四六年)は、雪の中で秩父市の山村に往診する元長と、元長の教え子安藤文澤の姿を描いている。安藤は国内で最初期に種痘を実施したことで知られる。

一八五二年に現在の飯能市で日本初の帝王切開手術を成功させた伊古田純道(いこだじゅんどう)(秩父市出身)と岡部均平(飯能市出身)も如達堂の卒業生。門人の名簿「及門姓名簿(きゅうもんせいめいぼ)」(一八四九年)には三人の名前のほか、非人道的行為として妊娠中絶を禁止するなど医師の心得が書かれている。当時は生活苦による妊娠中絶が頻繁に行われていたといい、井上さんは「胎児の命も大切だとするのは画期的な考え方だった」と指摘する。

十九日の午後二時からは井上さんの解説会がある。入場無料。開館は午前九時~午後五時。月曜、祝日と三十日は休館。問い合わせは県立文書館=電048(865)0112=へ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20150906/CK2015090602000147.html
参照元記事 / 東京新聞

「如達堂産科奥術秘伝巻」 / 東京新聞

「如達堂産科奥術秘伝巻」 / 東京新聞

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