江戸幕府の誕生につながる天下分け目の合戦があった「関ケ原」(岐阜県関ケ原町、写真)を世界三大古戦場の一つとして売り出そうと、地元自治体は二〇一五年度から観光開発に乗り出す。南北戦争の地となった米・ゲティズバーグ、ナポレオンが敗れたベルギー・ワーテルローの取り組みを参考に、展望台や案内施設を整備。両古戦場との交流も始める。
岐阜県によると、新たな取り組みとして高さ二十メートルほどの展望台を古戦場に建設。眺望スペースに案内板を設け、どこにどの武将が陣を敷いていたかが一目で分かるようにする。
関連資料を展示する町歴史民俗資料館には、ゲティズバーグの関連施設の展示技術を導入。壁面三六〇度に絵や映像で合戦の様子を再現し、音声を聞きながら絵巻のように鑑賞できる。
東軍を率いた徳川家康、西軍の石田三成といった有名武将七人の陣跡には遊歩道や陣幕を整備。玄関口のJR関ケ原駅前には総合案内所を新設し、合戦ゆかりの名所を英語でも紹介する。武将グッズの企画と販売にも力を入れる。一連の開発は一九年度までに終える予定だ。
一六〇〇年の関ケ原の戦いでは、七万四千人の東軍が八万四千人の西軍を破り、江戸時代が幕を開けた。
日本史を代表する合戦で、海外の軍隊の教科書にも取り上げられている。知名度とは裏腹に、観光する場所は資料館と二十七カ所の石碑ぐらい。観光客は遠のき、一一年の十二万七千人から一三年は九万一千人にまで減った。
県と県教委、関ケ原町は「世界的なブランドが手つかずだった」として、昨年八月に活用策を検討する有識者懇談会を設置。十、十一月には、観光地化に成功したゲティズバーグ、ワーテルローへ幹部職員を派遣して取り組みを学び、海外からの観光誘客を狙って「世界三大古戦場」構想を打ち出した。
関ケ原町は今春にもゲティズバーグ区の幹部を町に招き、友好交流協定の締結を目指す。
同区も締結に前向きという。ワーテルローの地元自治体との交流も働き掛ける。
◆関東でも街おこしに
関東地方にも街おこしにつながっている古戦場がある。埼玉県行田市の忍城(おしじょう)跡は、安土桃山時代、わずか五百の兵で二万の石田三成軍による水攻めに耐えた。二〇一二年に公開された映画「のぼうの城」のモデルで「落ちない城」として知られ、「落ちない御守(おまもり)」が受験シーズンに人気を集めている。
豊臣秀吉が滅ぼした北条氏の居城、小田原城(神奈川県小田原市)周辺では毎年五月、北条氏をたたえる「小田原北條五代祭り」が盛大に開かれる。
東京都東村山市の久米川古戦場は、南北朝時代の武将、新田義貞がゆかり。ご当地グルメ「東村山黒焼きそば」と関係がある。
黒焼きそばの特色のイカスミを使ったソースを開発した「ポールスタア」の桜井憲一社長(68)が「義貞は敵に見つからないよう、干し飯など夜食に炭をかけて食べたという伝説がある」とPRし広まった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015010602000238.html
参照元記事 / 東京新聞