しょうゆに着目し、全国の蔵元紹介や好みの選び方を指南する「醤油(しょうゆ)本」が出版された。執筆者の一人には、えりすぐりの全国のしょうゆを販売する前橋市の専門店「職人醤油」(同市西片貝町)の高橋万太郎代表(34)も名を連ねる。「職人の人となりや、作り手によって味が全く違うしょうゆの奥深さを知ってもらえたら」と語る。
本の出版は、何種類ものしょうゆが並ぶ同店を訪れた編集者から提案された。国内には約千四百のしょうゆの蔵元があるが、高橋さんは「慣れ親しんだものを使う人がほとんど。編集者には『こんなに違いがあるのか』と面白がってもらった」と振り返る。
前橋市出身の高橋さんは二〇〇六年、「起業したい」と一念発起し、三年勤めた精密機器メーカーを退職。具体的な仕事を考える中で、「良い物を作っている自信はあるけれど売れない」と嘆く伝統産業の職人が多いことに着目した。
特にしょうゆは種類が多いのに定番を選びがちで、一リットル入りのボトル販売が主流のため、消費者が違いを試すのにハードルが高いことに気づき、百ミリリットルの少量販売を思い付いた。
蔵元に飛び込みで見学に行くなど人脈を広げ、こだわりの味を提供する蔵元に少量販売への理解を求めた。「業界にそれまで全く関係のなかった第三者だったから賛同を得られたのかも」と振り返る高橋さん。〇七年に開店し、店頭とインターネットで販売。今では一日一万五千~二万本を売り上げる。
本では、「濃口(こいくち)」や「淡口」など味の違いのイロハから、原材料や製法の違いなどを解説。六十三の蔵を厳選し、紹介文、職人の顔写真も付けた。しょうゆを使う料理のレシピなども掲載する。「もし、しょうゆ検定があるのなら、初級と中級はカバーしている内容」と胸を張る。
今も月に一週間は各地の蔵を回り、新たな味を探求する。訪ねた蔵は四百カ所を超えた。「消費者自身で味わい、味の違いを比べてもらうのが一番。本で興味を持ったら、ぜひ店に足を運んで」と呼び掛ける。
「醤油本」は百二十八ページ、税込み千五百十二円。全国の書店で購入できる。問い合わせは、玄光社営業部=電03(3263)3515=へ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015062402000216.html
参照元記事 / 東京新聞