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伝統の「茶袋」唯一の職人が「森の名手・名人」に / 奈良・山添村

茶葉を煮出す際に使う竹製のかご「茶(ちゃん)袋(ぶくろ)」を、国内で唯一製造している奈良県山添村の浦嶋正幸さん(85)が、森や山に関する優れた技術を持つ人に贈られる「森の名手・名人」(公益社団法人・国土緑化推進機構主催)に選ばれた。平成14年から始まり、今年は全国で64人を認定。奈良で唯一選ばれた浦嶋さんは、「体がもつ限り、これからも作り続けたい」と笑顔を見せた。

あぐらをかいたひざの上で、細長い竹の皮を手編みしていく。慣れた手つきが、培われた技術の高さを物語っていた。「若い時に身につけた技術は今でも、体が覚えている。自然に手が動く」という。

茶袋は高さ約7~8センチの丸いかご。細工に適した柔らかい真(ま)竹(たけ)を使用し、幅約2ミリの竹の皮を重ね合わせて手編みしていく。完成した丸いかごを2つ合わせにして中に茶葉を入れ、鍋に入れるなどして茶を煮出す。茶がゆをつくる際など、地域に古くから伝わる調理道具だ。

近年は見た目のかわいらしさから、雑貨店などでも販売。小物入れとして購入する観光客も多いという。

浦嶋さんが茶袋作りを始めたのは終戦後。村の師匠のもとで竹細工の基礎を学び、約13年間作り続けた。その後は農機具を扱う仕事や村議を務め、茶袋作りからは一時離れていたが、当時村で唯一の職人だった先輩から「代わりにやってくれ」と頼まれ、平成17年から再び作り始めたという。

多いときで1日8個を作るが、「近頃は1日3~4個がやっと」。足腰が弱り始め、材料の竹を採りに行くのも一苦労となり、「そろそろ引退を」とも考えていた。そこに届いたのが、「森の名手・名人」認定の知らせだった。

「これでまた、やめられなくなった」と浦嶋さんは笑顔で話す。「体がもつ限りは、もう少し頑張りたい」。村の伝統を受け継ぐ唯一の存在として、これからも茶袋作りを続けていくつもりだ。

http://www.sankei.com/west/news/141028/wst1410280039-n1.html
参照元記事 / 産経WEST

あぐらをかいたひざの上で茶袋を手編みしていく浦嶋さん。手前の丸い竹かごが茶袋=奈良県山添村 / 産経WEST

あぐらをかいたひざの上で茶袋を手編みしていく浦嶋さん。手前の丸い竹かごが茶袋=奈良県山添村 / 産経WEST

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