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つやめく蒔絵万年筆 「パイロット」平塚に資料館

筆記具メーカー「パイロットコーポレーション」(本社・東京)は十五日、平塚市西八幡一の平塚事業所内に、蒔絵(まきえ)万年筆の展示資料館「蒔絵工房NAMIKI(なみき)」を開いた。伝統工芸によって美しく個性的に仕上げられた万年筆や蒔絵箱など約百点が並び、来場者の目を引きつけている。

同社の前身「並木製作所」は一九一八(大正七)年、東京高等商船学校(現東京海洋大)出身の並木良輔、和田正雄両氏が興し、万年筆の製造販売を始めた。海外の高級品と勝負するため、蒔絵を施すことを発案。漆工芸の草分けである六角紫水氏と、弟子で後に人間国宝となり、「漆の神様」と呼ばれた松田権六氏の指導で完成させた。

並木、和田両氏は二五(同十四)年、販路開拓のために蒔絵万年筆を携えて欧米を訪問。好評を得て、帰国後、ロンドンから最初の注文が入る。三〇(昭和五)年には英国のダンヒル社と契約し、「ダンヒル・ナミキ万年筆」としてロンドンやパリ、ニューヨークなどで売りに出され、同年のロンドン海軍軍縮会議で調印に使われた。

その後、松田氏を中心に蒔絵万年筆を研究、創作する集団「国光会」が発足。現在は平塚事業所にいる蒔絵師三人に加え、石川県輪島市などの職人が協力して製作している。

担当者によると、資料館を開いたのは「伝統を守る」という社の考えに加え、二〇〇一年に平塚事業所にあった筆記具資料館を閉じて地元で惜しまれていたこと、市に「平塚の近代史を伝え残してほしい」と望まれたことが背景にある。

平塚事業所は敗戦後の一九四八(昭和二十三)年、旧海軍火薬廠(しょう)跡地の払い下げを受けて開設された。今回、資料館として使われるようになった通称「レンガ棟」は大正後期に建てられており、蒔絵万年筆だけでなく、地域の歴史が共存している。

展示されているのは、大正期のもの、寺井直次氏や田口善国(よしくに)氏ら「人間国宝」の作品、「技術の継承」のために職人が構想から三年かけて完成させたものなど。藤沢市の女性(47)は「とても精巧で、小さいのに大きな世界がある」と見入っていた。

平日午前十時~午後四時開館。観覧無料だが予約が必要。蒔絵工房NAMIKI=電0463(35)7069=へ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150121/CK2015012102000122.html
参照元記事 / 東京新聞

職人が月日をかけて製作した個性的な蒔絵万年筆=平塚市で / 東京新聞

職人が月日をかけて製作した個性的な蒔絵万年筆=平塚市で / 東京新聞

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