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窯元の技術、思いが結集 「三川内焼窯元はまぜん祭り」/ 長崎

第30回の節目を迎えた「三川内焼窯元はまぜん祭り」が1日、佐世保市三川内町周辺で始まった。会場では、20の窯元でつくる実行委が、オランダの国立博物館が収蔵する江戸時代末期ごろの三川内焼を再現し、同国王室に献上する「水差し」が展示される。制作現場を訪ね、工程や作品への思いを聞いた。

4月中旬、大きな窓から春の日が差し込む同市三川内町の平戸洸祥団右ヱ門窯工房。実行委員長の中里太陽さん(38)が、船をかたどった生地に刃をすっと入れる。息を吹き掛けたり、刃物の柄で余分な部分を落としながら彫り進めると、唐草模様になった。装飾を施す「透かし彫り」は、柔らかいうちに彫らないとひびが入ってしまう。「乾燥との戦い。最も神経を使う工程のひとつ」。中里さんは表情を引き締める。

作品は気球やオランダ船をかたどっており、石こう型で作った八つのパーツで構成。透かし彫りなどを終えると、粘土でパーツを接着し、900度の窯で8時間ほど素焼きする。常温に戻ると釉薬(ゆうやく)を掛け、1300度の窯で約15時間かけて焼き、同じくらいの時間をかけて冷ます。10日近くの繊細な作業を重ね、ようやく完成する。

しかし、「形がユニークなので気温や湿度などで焼き上がりの形や色が変わる。完成形が読めなかった」という。手掛けた生地の数は20を超えるなど、ぎりぎりまで制作を続け、納得いく作品ができた。

中里さんによると、どう再現するのか、実行委で意見を交わし、今回の工程に至った。「ひとつのものを作るために意見を重ねてきた窯元のおかげ」と感謝を込める。

展示後、作品はオランダ王室に届けられる予定だが、中里さんは「世界に発信しているように感じるかもしれないが、日本の人にも三川内焼の文化や歴史を知ってもらいたい」と来場を呼び掛けている。祭りは5日まで。

http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2015/05/01085705017246.shtml
参照元記事 / 長崎新聞

透かし彫りの作業を進める中里さん=佐世保市、平戸洸祥団右ヱ門窯 / 長崎新聞

透かし彫りの作業を進める中里さん=佐世保市、平戸洸祥団右ヱ門窯 / 長崎新聞

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