江戸末期から作られているとされる松本地域の工芸品「松本箒(ほうき)」。五年前に雑誌などで紹介されて使いやすさなどが見直され、人気を集めている。「穂先が柔らかく、裾がふんわりと広がって掃きやすい」ためだが、職人の高齢化が進み、舞い込む注文をこなしきれないといった悩みも浮上している。
松本箒は、松本市南部の野溝地区に「ホウキグサ」の種が江戸から持ち込まれ、栽培と製造が始まったとされる。箒のサイズはさまざまだが、片手で掃ける長さ九十センチほどの手ぼうきが主流。戦後間もないころには同市内だけで百二十~百三十軒で箒が作られていたというが、掃除機の普及で需要が減り、松本地域の職人は現在十人ほどで、大半が七十~八十代という。
歴史ある工芸品に再び光が当たったのは二〇一〇年、掃除機にはない手作り感や、柔らかなはき心地が雑誌や本などで紹介されたのがきっかけ。贈答品としても脚光を浴びている。
塩尻市広丘吉田の「米沢ほうき工房」では、代表の米沢勝義さん(73)と妻純子さん(68)、長男資修さん(40)の三人で一日二~五本のペースで生産している。東京や名古屋といった都市圏からも注文が入るようになり、勝義さんは広がる人気に「とにかく驚いた」と笑う。特注品の場合は半年待ちという。
ただ、松本地域の工房の大半は休業状態といい、資修さんは「松本箒の魅力を伝えていくためにも、伝統を引き継ぐ態勢を整えたい」と語る。
松本市深志の百貨店井上で二十日から始まった「第三十回県伝統工芸品展」では、松本箒も伝統ある工芸品の一つとして出展されている。ホウキグサを束ねて編んでいく作業を実演している勝義さんは「松本箒の魅力を手に取って感じてほしい」と話していた。
http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20150221/CK2015022102000016.html
参照元記事 / 中日新聞