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多摩川:再び「江戸前アユ」 天然稚魚、堰避け上流へ陸送

◇東京都が復活プロジェクトに着手

東京都が今春、多摩川全域で天然の「江戸前アユ」を復活させるプロジェクトに着手した。多摩川は一時水質が悪化していたが、近年改善し、アユが急増している。ところが、取水堰(せき)などに遡上(そじょう)を阻まれ、上流では釣り客のために他県産の養殖アユを放流するちぐはぐな状況だ。都は中流で天然の稚魚を捕まえて上流へ陸送する研究を進め、2年後には10万匹を放流することを目指す。

多摩川の天然アユはかつて江戸っ子に親しまれ、現在の京王多摩川駅(調布市)周辺には料理屋が軒を連ね、屋形船で漁見物も楽しむことができた。1960年代に家庭排水などで川が汚染され一時姿を消したが、下水処理技術の向上で再び遡上するようになった。2012年の都の調査では、1194万匹が東京湾から多摩川をさかのぼっていると推定され、83年の調査開始以降最多となった。

中流では一部が捕獲され、地元の飲食店や都内のデパートで売られているが、堰が障害になり多摩川でふ化し東京湾で育った「江戸前」が上流まで遡上することは少ない。

都水産課によると、上流では漁協が夏場のアユ釣りのため、毎年富山や宮城で人工ふ化した稚魚約100万匹を放流する。だが、海釣りの人気に押され気味で遊漁料収入が減っている上、稚魚の仕入れコストがかさみ、経営を圧迫している。

「中下流で稚魚が滞留している。歯がゆくて仕方がない」。上流で釣り客を受け入れる秋川漁協の田中久男参事は訴える。天然アユは「さおの引きが養殖とは違う」と釣り客に人気だといい、味についても「上流は水やエサのコケがきれいで、おいしくなるはずだ」と強調する。

こうした声を受け、都は中流にとどまっている天然の稚魚を捕獲して上流にトラックで運んで放流しようと、今年度から捕獲や運搬方法の研究をスタートさせた。来年度から徐々に放流を始め、流域漁協への技術移転も目指している。都水産課の担当者は「『天然アユが釣れる多摩川』を実現し、釣り客を集めたい。多摩川のアユは、江戸時代に将軍に献上されたこともある。名産品の復活もできれば」と期待を寄せる。

http://mainichi.jp/feature/news/20140526k0000e040209000c.html
参照元記事 / 毎日新聞

多摩川の調布取水堰をさかのぼるアユの稚魚=2014年4月26日(国土交通省京浜河川事務所提供) / 毎日新聞

多摩川の調布取水堰をさかのぼるアユの稚魚=2014年4月26日(国土交通省京浜河川事務所提供) / 毎日新聞

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